この作品でイメージしているユーザーは、お客様にレトロな雰囲気で音楽を楽しんでもらいたいと思っている喫茶店です。
1935年頃のRCA Victor コブラ型ピックアップと1940年代の電気蓄音機の筐体を再利用し、SPレコードを奏でることによりノスタルジックな雰囲気を楽しむことをイメージしました。
また、CDなどの現代のプレイヤーを接続して高音質な音楽も楽しめる実用性も持ち合わせた現代版の電気蓄音機も志向してみました。
5球スーパーの電気蓄音機の筐体でボロボロの状態でしたが、手直した上で再塗装しました。
音楽と雰囲気を楽しむ目的から5球スーパーラジオの機能をカットし、ラジオ選局ダイヤルの窓枠からは出力真空管(のヒーターの赤い色)が見えるようにしました。
1930年代の電気蓄音機用ピックアップで今でも動作するものは少なく、また、動作しても特性劣化しているものが多くあります。
しかし、那須科学歴史館が所有している3台のコブラ型(バランスド)ピックアップは全て動作品で、当時の他のピックアップに比べ出力電圧が大きい特徴があります。また、音質も比較的優れていると言えます。
3台のコブラには夫々RCA Victor、Victor、Concertoneの銘が記載され、今回はRCA Victorの名が記載されているコブラを用いました。但し、台座が壊れていましたので作り直しました。
以前は主に300Bでアンプを設計、製作していましたが、最近ではアンプの出力管には6AS7を好んで用いています。6AS7はオーディオ専用管ではないためオーディオ管として用いると幾つかの欠点があります。しかし、それをかわして特長を生かすとオーディオ出力管として名高い300Bに匹敵する音質を得ることが出来るのではないかと考えています。
また、300B(と言っても色々ありますが)の十分の一以下の費用で入手可能なので、近い将来、6AS7アンプの製作講座を開催したいと考えています。※下記の真空管アンプの製作講座を参照
基本仕様:Single Parallel Mono AMP. Max.Power:4W 歪み率:0.2%(1kHz, 1W), 周波数特性:50Hz~85kHz(<±3dB)
6AS7アンプの設計、製作の最大の要は、歪み打消し技術と大電流が流れる自己バイアス用抵抗の処理です。
SP78専用のイコライザーカーブで設計しています。本来であれば、パワーアンプとは別筐体、別電源で設計、製作すべきですが、今回は一体構造としました。
Jensen P8R(1957年)のOEMと思われる8inch 8Ωフルレンジユニットを実装しました。また、気に入った音色のスピーカーで聞くことが出来るように、外部スピーカー・ユニットの接続も簡単にできる構造です。
SPレコードでの試聴についてですが、バリレラ・カートリッジと違いコブラはハム音を良く拾います。また、フォノモーターを1930年~1940年代に電蓄用として使用されていたものを用いましたので、ダンパー等の処理はしたものの、ゴロ音が少し出ています。当時の技術者であればいろいろ工夫をしてこれらのノイズを抑えたのでしょうが、今回はこの程度で満足することにしました。
パワーアンプには外部入力端を2つ設けていますので、CDプレイヤーやFMチューナーを接続できるようにしてあり、こちらでは高音質を楽しむことが出来るレベルにあると思います。
2016,2017年 開催の6BQ5真空管アンプの製作講座は好評でしたが、次は真空管300Bアンプを作りたいというご要望もありました。
しかし、300Bが高価な上、下手に安価な部材でキットを組むと折角の300Bの持ち味が生かしきれないという課題がありました。
そこで、安価でありながら高音質の6AS7アンプを開発することになりました。
参考資料「6BQ5真空管アンプの製作(芝工大公開講座2016年,2017年)」(pdf.ファイルにリンク)
イベント・講座についてや、当館に対するご質問などございましたらメール・お電話にてお問い合わせください。
お問い合わせ