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2021.03.22

古典ラジオ Eveready A-C Receiver Model 2(1928 USA)の修繕とラジオ技術の歴史について

 長野の骨董店から不動品のEveready A-C Receiver Model 2を入手し、修繕しました。

 この古典ラジオは昔の資産家の蔵に眠っていたとのこと。当時、小さな家1軒か高級車1台を購入できる値段で、趣味、娯楽のためというより絹などの相場情報を得るための事業目的だったのではないかと推察しています。

修繕について

 全体的に配線の絶縁被覆がぼろぼろの状態で、いたる所で配線間がショートしている非常に危険な状態でした。

可能な限り配線をやり直し、電源スイッチの交換とヒューズ(ホルダー)の追加を行った上で電源を投入したところ、無事、作動しました。しかし、音量が非常に小さく、音が歪んでいます。

次にスピーカーの交換を行いました。スピーカーのコーン紙が何か所もひび割れした上に硬化していたので、手持ちのCaesarのマグネチック・スピーカーに交換すると音量はかなり改善されました。

 しかしながら、長時間試聴すると動作が不安定になります。これを治そうとすると本格的なオーバーホールが必要な上、主要部品の手直しと交換が必要と思われるため、これ以上の修繕を行わないことにしました。

修繕後の外観・筐体はアルミです
交換した線材の一部(ぼろぼろの状態)
左が交換前のスピーカー(Model 612N)でマグネチックSPの基本構造が良く分かります。左が交換後のCaesar製
同時代、同形式の古典ラジオ(RCA Radiola 18, Atwater Kent Model 46)と比較すると

 Eveready A-C Receiver Model 2(1928年)はRCA Radiola 18(1928年)とAtwater Kent Model 46(1929年)とは同時代、同形式の古典ラジオであり、当時、熾烈な開発競争を繰り広げていたと想像しています。当時、古典ラジオの電源は手間とランニングコストがかかるバッテリー式から電灯線を電源とするエルミネーター式に移行途中の時代で、エルミネーター式電源は当時の最先端技術でした。この3台の古典ラジオは全てエルミネーター式です。

ラジオの回路構成は3台ともストレート方式で、次のようになります。

  • Eveready A-C Receiver Model 2:高周波3段増幅、プッシュブル電力増幅(真空管構成 26,26,26,27,26,71A*2,80)
  • RCA Radiola 18 :高周波3段増幅、シングル電力増幅(真空管構成 226,226,226,227,226,171A,280)
  • Atwater Kent Model 46     :高周波3段増幅、プッシュブル電力増幅(真空管構成 26,26,26,27,26,71A*2,80)

 すなわち、ほとんど同じ構成で基本性能(感度、周波数選択性、大きさ、重量)も似たようなものであったと思われます。また、筐体はRCA Radiola 18が木製でAtwater Kent Model 46が鉄製であったのに対して、Eveready A-C Receiver Model 2はアルミニウム製であるので更なる高級感を狙った可能性があります。多段の高周波増幅の技術は高度ではありますが、1920年代後半にはアメリカの多くのメーカーでその技術が確立されていたため、競争がかなり熾烈であったと思われます。

ラジオ技術の歴史について

 今までのラジオの修繕、調査に基づきラジオ技術の形成に関し重要なことを推察したいと考えています。それは1930年代からラジオの受信方式がスーパー・ヘテロダイン方式に移り、1940年代以降は同方式でほぼ統一される状況になった事柄に関してです。

 多くの無線工学の教科書ではスーパー・ヘテロダイン方式の特長として受信感度と周波数選択性の向上が述べられ、この特長により1940年代以降のラジオの方式がスーパー・ヘテロダイン方式でほぼ統一される状況になった印象を与えています。しかし、1920年代のストレート方式の古典ラジオとスーパー・ヘテロダイン方式のラジオについて受信感度と周波数選択性の性能を比較すると、現代のスーパー・ヘテロダイン方式のラジオに比べても古いRCAなどの多段高周波増幅のストレート方式の方が性能が良いと感じることが多いのです。

 すなわち、1930年代以降、ラジオの受信方式がスーパー・ヘテロダイン方式に移っていたのは、スーパー・ヘテロダイン方式の技術的特長だけで無く他にも大きな要因があったのではないかと考えています。その要因を探るためには1920年初期のラジオ技術の競争まで遡る必要があります。

 初期のラジオは主に真空管 201Aにより構成され、その増幅度は5~7ぐらいで小さく、また、グリッドとプレート間の結合容量により周波数が高いと発振しやすい欠点があり、このような問題に対応するためニュートロダイン方式などの特徴ある技術が生まれ、特許化、差別化することが出来ました。しかし、1920年終盤頃から真空管の改良が進展するとともに多くのメーカー(主にアメリカ)で多段の高周波増幅の技術が確立していきました。

 つまり、多段高周波増幅のストレート方式では競争相手に打ち勝つことが難しく、純技術的側面よりも競争に打ち勝つための政策的側面によりスーパー・ヘテロダイン方式に移っていったのではないかと推察することが出来ます。

 また、1930年以降、欧米ではオールウエーブ化(中波+短波)に伴い受信周波数が高くなり、受信周波数が高くなればなるほどストレート方式よりスーパー・ヘテロダイン方式の方が有利になるので、このことも影響したのではないかとも考えています。

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