甘利俊一氏はAIの先駆的研究の第一人者です。私は1990年頃に自分の研究分野(高精度計測技術)へのニューラルネットワークを応用することを検討するため、甘利氏の著作「神経回路網の数理」を熟読していました。懐かしい思い出です。
今回、甘利氏が日本経済新聞紙上(2025/10/6)で「AIはニュートンになれない」と語った内容について、科学史の観点から補足いたします。具体的には、既存の概念に対して、全く異なる新たな概念に飛躍することは人間特有の能力であり、現時点でのAIにはそれを真似ることは不可能です。よって、ニュートン、ガリレオ、ケプラーが行った幾つかの業績に対し、新たな概念に飛躍する度合い、即ち、パラダイムシフトのレベルの評価を行い、甘利氏が語った内容を科学史の観点から裏付けたいと考えました。
その結果、「現時点のAIはニュートンは勿論のこと、ガリレオにもケプラーにもなれない」との結論に達しました。少し具体的に言えば、ケプラーの「観測データを解析し、ケプラーの法則を見出す」ことについては、AIが行える可能性が高いと考えることが出来ます。しかし、楕円軌道(第一法則)の原因まで推察するには既存概念からの飛躍が必要であり、この点については「AIはケプラーになれない」と言うことが出来ます。詳細については、下記資料を参照頂ければ幸いです。
資料 : 甘利氏「AIはニュートンになれない」への科学史からの補足説明.pdf(ダウンロード)
実を言えば、私は科学・技術的事柄についてAIと良く議論しています。一年少し前と比べてAIは急速に進歩しています。甘利氏の言葉を借りれば、「AIはニュートンになれないが、ケプラーになれるかもしれない」と私も感じています。つまり、AIは科学史上でパラダイムシフト(⇒科学革命)を起こすことは出来ませんが、優秀な研究者(ノーベル賞も取れるかもしれないレベル)になれる可能性を秘めています。
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